健康農園 ぼかし肥料作りの秘密!
いぞうさんです。
今回は健康農園さんのお米作りレポートです。
阿蘇のふもとに位置する菊池市の米どころ七城に健康農園さんの田んぼはあります。
阿蘇からの伏流水を引いた3町、9000坪の田んぼで健康農園さんはひのひかりを育てています。農薬も化学肥料も使うことはありません。
無農薬、化学肥料不使用。
ただし、健康なうえに美味しい!を目指す健康農園さんは自分たちの工夫した特製の肥料は与える。そこがキモ。
それがぼかし肥料と海水のにがり、を使うことなのです。
田植えも迫った今回はぼかし肥料の制作現場に密着してきました!
5月の爽やかなお天気、はるかに鞍岳や八方が岳、さらには阿蘇を望む七城の一角。
ぼかし肥料の準備に張り切るお二人の笑顔が迎えてくれました!
いい笑顔だねえ、堤さん、野田君!
ここで前回の作業のおさらい。
2月に森へ入り、自然の腐葉土を採取してきた堤さん、野田くん。
まず腐葉土の土着菌に乳酸菌等の菌とマグネシユウムの多い苦土石灰を足しました。
それに焚いたお米を与えて菌床にして培養されてくるのを待つ。
以前、SNSで投稿しましたが、覚えてますか?
この工程で窒素分の豊富な肥料の核が出来上がるわけですね。
この肥料により、お米は効率よく使えるアミノ酸として取り込むことができるようになるのです。
前回も今回の取材も面白い工程でした。
お米作りにそんなことするなんて、全然知らなかった私。
いえ、普通の農家さんはJAで買ってきた化学肥料を田んぼに撒くだけなので、そんな面倒な手順は一切しないわけなんですけどね。
でも、お二人は楽しそう。
子供が粘土遊びに夢中になるみたいな顔で、私に得々とお米作りについて語ってくれる様子はホントに、ある意味、可愛い。いいおっさん二人なんですけどね。
さて、菌床で寝かせて十分菌を増やしておいて、さあ今回、田植えに向けてさらに次の段階にステップアップ、という訳です。
まず水に、2月に作っておいた菌床の菌を混ぜ込みます。
それだけじゃない、ヨーグルトも足すんです!
納豆もです!
つまり乳酸菌と納豆菌を足すわけ。
どこまで凝るんだよ!
との突っ込みを入れてしまった私。
そして撹拌機に米ぬか、もみ殻燻炭(これも燻して自作)、もみ殻を投入、混ぜ込みます。
これが2月から培養されて増やされてきたた土着菌の新たな住みかとなる訳ですね。
乳酸菌 45度まで低温発酵
土着菌 45度から48度までで発酵
納豆菌 60度まで
という条件があるので撹拌機でその性質に合わせた菌床を用意するわけです。
この撹拌機で混ぜられる菌床に、作り置きの水に混ぜた2月からの菌を注ぎます。
さらに蟹殻エキス、魚かす(いわし、さば、かつお、まぐろ)、菜種かすを混ぜ込むのですが、こちらは美味しさの秘密、だそうです。
蟹殻はカニの甲羅を砕いたもの。
キトサンやキチン質が豊富、微生物のえさとなり、菌の繁殖を助ける働きをします。
魚かすはアミノ酸の効果でお米に照り、輝きを与えるのです。
菜種かすは肥料効果を速め、有機ガスなどの発生を防ぎます。
それら全てを受け入れ、撹拌機がうなりを上げます。
投入された全部を混ぜて攪拌し、均等に混ざったらやっと出来上がり。
スコップで機械の攪拌を助け、念入りに仕上げます。
これを保管します。
いやあ、重労働です。
堤さんの腰が心配。
野田君が頼りです。
こうして保管しておくと3週間で発酵し、味噌の匂いがしてくるそうです。
味噌の匂いは発酵の匂いなんですね!
そうだったんだ。
これは栄養満点だわ、とあっけにとられてしまいました。
お米作りって、ここまでやるものなのか、と呆然たる思いとなりました。
ここまでを過去のトライから失敗を繰り返しながら探り当て、確信を抱いた堤さん。
勿論、ぼかし肥料は堤さんの専売特許じゃないけど、配合割合や寝かせる時間、投入しない方がいいものの決定など、固有の工夫と努力が彼の製法には詰まってます。
こりゃよそのどこでもこのお米は食べれませんわ。
感服、脱帽です。
堤さんによればこの時点で半熟ぼかし、なのだそうです。
あとは田植えとなって、田んぼに投入、漉き込む。
するとそこから菌は再発酵するのだそうです。
外気温28度、土の温度15,6度で低温菌は死ぬ。
夏にかけて悪さをする菌はいなくなるのだと。
そうか、悪さをする菌もいるから、それは取り除かなくちゃならない訳なんだ。
なるほどねえ、と、感心するしかない私。
さて、5月末にはこれを田んぼに撒く訳ですね。
この時、健康農園さんにはまた独特の工夫があります。
さらに海のにがりを投入するのです。
にがりはマグネシュウムを補強する役割なのですが、マグネシユウムは植物の生育に必須、重要酵素の活性剤となるのだそうです。
これも健康農園さんの美味しいお米作りには大変重要な工程なのですね。
無農薬で栄養満点なだけじゃなく、美味しいこと。
この美味しいこと、というのが堤さんには絶対に外せないことなのですね。
「自然栽培というが、今の人は昔の人と違って、舌が肥えてしまっている。素朴な昔の味も悪くはないが、せっかく安心安全に美味しいお米が食べられるのだから、その方がよかばいた。それは私たち百姓が作ればよかことだけん、それぞれが工夫をしてそれぞれの田んぼにあった作り方をすれば色んな美味しいお米が生まれてくる、お客さんも私ら百姓もいいことづくめじゃにゃあか?」
ここで私が俗っぽい心配をしました。
「本当に記事に書いていいの?誰からも賛成されずに、ここまで工夫して安全安心な美味しいお米を実現してきた堤さんなのに、作り方を公開して、人に真似されていいの?企業秘密では!?」
「いんや、よかばい」
誰でも真似していい、と堤さん。
この製法でも田んぼごとに土壌のせいで出来は違ってくる。
それぞれの味が成熟すれば、お客さんは自分の好みの味に出会える。
お米の世界が豊かに広がる。
そうなって欲しい。
だからこそ、野田くんを後継者として育て、自分のお米作りを託そうとしている堤さん。
でかいな、おっさん!
いえ、私と同い年なもんだから、親しみを持っておっさんと呼びますが、たいしたおっさんです。
彼ら健康農園さんのお米を販売させて頂けること、私たち一家の誇りです。
お天気も感動も、素晴らしい5月の1日でした。
次回は苗床作りと田植えを取材予定です。
こう、ご期待!
0コメント